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日本の弓は骨で引く:三十三間堂 通し矢

2018.01.20

先週14(日)は、三十三間堂の通し矢でした。
新成人のお祝いを兼ねて行われる弓道大会で、全国から新成人含む2千名以上参加される大会です。
以前成人式が15日だった頃はその日にしていました。
今の日程に変わってからは、各地域の成人式にも出られるようにとの配慮で、昔のまま15日に近い日曜日に開催されています。

前夜とても冷え込むと思ったら、雪化粧の東山でした。

写真は(いいアングルで撮れませんでしたが、雰囲気だけでも・・・)、
三十三間堂の西のお堂。屋根に雪。
人ごみの向こう、左に見える白いテント下から、右手へ60m先の的に向かって矢を放ちます。
通常の大会は、四段以上で着物の着用を許されていますが、
この大会では、新成人で初段を取っていたら許されています。
女性は振袖、男性は烏帽子の方もいらして、普段は見られない華やかさです。

この「通し矢」のいわれは、
昔、弓の名手たちが藩の名誉をかけてこのお寺のお堂の縁側;三十三間(120m)を矢を射て競ったのが由来。

現在、的までの距離は、
近的;26m、遠的;60m。

写真に写っている横に長い建物、その軒先ある廊下の120mとなると、
山なりに矢を放てば 天井に突き刺さる、
刺さらないように放てば向こう端まで届かない。

つまり、
よほどの剛弓を使わないと端まで通らない…ということです。
それで「通し矢」と呼ばれています。

そんな状況で、昔の種目は、
・百射中、何本通るか
・千射中、何本通るか
・日中で何本放てて、何本通るか
・一昼夜で何本放てて、何本通るか
と、いろいろやっていたようです。

最後の記録は、明治32年。5千本足らず。
最高記録は紀州藩の名人が挑み、総矢数13,053本中通し矢8,133本で天下一となっています。
この記録が破れることはありませんでした。


これだけの数を射るとなると、筋力が必要になりますが、
基本的に日本の弓は「骨で射る」といい、筋力はさほどいりません。

例えば、アーチェリーと比べてみましょう。
アーチェリーは、左手で弓を、右手で弦を取り、左腕を的の方へ伸ばして弓を構え、
そこから右肘を直線的に後ろへ引きます。

和弓は、左手で弓を、右手で弦を取るのは同じなのですが、
的を見ながら、万歳してから、左手は腕を伸ばしたまま的の方へ、右肘はその反対へ開いていきます。
開くと必然的に下がってくるので、矢が口の高さになるところまで、開いて下げます。

初心者の内は、慣れない所作なので筋力を使いますが、
上手になってくると、さほど筋力はいりません。
なので年齢に関係なくできますし、実際ご高齢の方が多いです。
技術や風格は、年数を経るほどに増してきます。


日本の文化は、元々身体の仕組みをとてもよく知っていて、
現代では驚くべき身体能力を発揮していたのだと思います。

2月最初の土日、
等身大の骸骨模型のバラバラの骨を、参加者の皆さんと組み立てながら、身体への理解と動きを学ぶ講座をします。
いつかやってみたかったのですよ。楽しみです。

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